轟音のフェード・アウトからSEが鳴り始めても、呆然と立ちつくしていた。
約1時間50分のパフォーマンスに拍手が贈られたのは、さらに少し後のことだった。


バンド結成から8年、彼ら初のアリーナ単独公演がさいたまスーパーアリーナにて行われた。この日のライヴは当サイト内でもレポートしたとおり、昨年秋のツアー“Tornado Z”の最終日に発表され、会場内に驚きと歓喜のどよめきを沸き起こした。今年1月大阪公演から始まったツアー“I was music”のSUPER FINALとして、彼らは結成の地・埼玉にバンド史上最大規模のライヴで凱旋することとなった。

 開演時刻の18時、まだ明るい会場内にピエール中野による恒例の場内アナウンスが入り、笑いが起こる。それから程なくして、会場は暗転。SEが会場内の緊張と興奮を高める中、TK、345、ピエールの順にメンバーが登場。そしてツアーの他公演と同様、バンドの歴史の始まりである「鮮やかな殺人」からライヴはスタートした。


 広いステージの中央、3分の1程度のスペースに完結する3人。堅牢に構えるロッククロームのドラム・セットを中心としたトライアングルの間隔は、小さなライブハウスと変わらないくらいなのだろうか。しかし、そこから放たれる音の重量感や音圧にまず驚いた。ハコの広さを活かしてエッジを立たせたサウンドを展開するのかと思ったら、むしろ広い空間すらも圧迫させるほどの前傾なパワーで、「Sadistic Summer」「ハカイヨノユメ」一気に畳みかけていく。続く彼らの代表曲「DISCO FLIGHT」では、イントロ・フレーズの殺傷力もさることながら、暴れまくるギター・ソロの裏でもクッキリと耳に届くベースに衝撃を受けた。しかも決して歪みなどで固めまくった平面的な音じゃなく、弦がはじかれたときの質感で。圧倒的な音圧で3人が鳴らしつつも、個々の音の輪郭を際立たせることが彼らには可能なのだ。

 そしてMCを挟むことなく、ツアー・タイトルでもある新曲の「I was music」へ。さっきまでの窒息しそうなほどの気迫から変わって、新曲は展開のグラデーションを感じる構成。特に、切なく駆け抜けていくサビが印象に残る。繊細な世界の続きを示唆するように、新曲が終わるとTKは椅子に座り、前回ツアーのレポートで紹介したアコギを抱えた。345もメインから、かつてメインで使っていたオイル・フィニッシュのシェクター製Sシリーズに持ち替える。経年により、音が熟成されていくというのが、このシリーズの特徴だ。6本の鉄線がはじき出す深く鋭いカッティング、リム・ショットやタムの残響が散りばめられた性急なドラムに、芯を残しつつも柔らかく滑らかなベースが響く。そして表と裏のように交錯する不思議な2本の歌声。「Tremolo+A」は、この日演奏されたどの曲よりも楽器本来の音が奏でられているのに、澄んだ水ほど冷たいのかのように脳内を冴えわたらせていく。


 再びギター、ベースともメインのシェクター製シグネチュア・モデルへ持ち替えると、凶暴な歪みギターのカッティングで「想像のSecurity」が幕開ける。硬質なビートが、派手なスティック回しとともに散弾銃のように放たれる。直線的な感情の上昇は「テレキャスターの真実」に続き、そのまま「ラストダンスレボリューション」でスパイラルな上昇に変化。続く「a 7days wondar」で、TKはメインと同機種にカポをしたサブのシグネチュア・モデルに持ち替え。粘り気あるベースがドライブさせ続けるダンサブルなグルーヴの中で、歌声、ギター、ドラムがそれぞれ姿を変えながら入れ替わり立ち替わりシンクロしていく。特にドラムは、スピード感と浮遊感という、相反するものが同時に成立する危うさに鳥肌が立った。
 しかし、「moment A rhythm」の始まりで、会場内はゆっくりと静寂へ向かって沈み始める。ステージ上方から水面を描くように扇状のレーザー光線が放たれて、その下でスモークが揺らぐ様は、冷たい海の底を漂っているかのような錯覚を呼び起こす。さっきまでバキバキなサウンドを奏でていた楽器と同一とは思えない程、たっぷりと潤いを帯びたギターのアルペジオ、溶けるようなベースの和音、しんしんと続くシンバルのリズム。終盤に差し掛かると、それらは轟音となって会場内を飲み込み、TKと345がステージから立ち去った。


 1人残されたピエールは、そのまま激しいドラム・ソロ&MCタイムへ突入。MCでは、ついに両親をライブへ呼べたとのことだが、下ネタや薬物乱用ネタなど不謹慎さ満開なトークに自粛は一切なし。むしろ「俺の両親の前で恥かかすんじゃねーぞ!」と、「Say!バイブス!」から始まったコール&レスポンスは、「1コ、十コ、千コ…?」「たますじ」などの下ネタ系コール、ピエールが"嬉しいときについやっちゃう"という「らんらんるー」コールから、「ultra soul」コール、Xジャンプ、ダチョウ倶楽部の「俺は怒ってるんだぞ!」ジャンプなどの諸先輩型コールと、かなり複雑な体に。“楽しいけど、このエア・ポケット的な空気からどう演奏に戻るんだっけ…”と個人的には段々気になり始めたのだが、3人が再び集まって鳴らす「JPOP Xfile」で鮮やかなほど一変した。その後「Telecastic fake show」「nakano kill you」「感覚UFO」とキラー・チューンが立て続けに投下され、いよいよ会場内の熱狂は暴走。声も楽器も裂けてしまうんじゃないかというほど鳴っていて、狂乱する7000人の歓声が遠くに聞こえるのが少し怖いくらいだった。

 続く「夕景の記憶」、345によるか弱くも押しの強い(?)グッズ紹介と来場へのお礼を間に挟んで、曲は「傍観」へ。ライブの終わりを示すこの曲が始まると、横長のステージが真っ赤に染まり、3人の姿と楽器類のみが浮かび上がった。

影絵のように表情は伺えなかったが、345が長い髪を大きく揺らしながらベースを高く掲げる姿が印象に残った。ライブで何度も聴いているはずなのに、それでも毎回より深いところを抉られるような強烈な感覚に襲われる。

3人が去ったステージ上でギターとベースの轟音が痙攣するように残っている間も、フェード・アウトされてSEが鳴り始めても、ほとんどが呆然と立ちつくしていた。約1時間50分のパフォーマンスに大きな拍手が贈られたのは、そのさらに少し後のことだった。

 彼らは新たなるアルバムのリリースに向け、再び制作活動へ入る模様。

自分の底をえぐられる覚悟を、今からまたしておきたいと思う。

【SET LIST】
01. 鮮やかな殺人
02. Sadistic Summer
03. ハカイヨノユメ
04. DISCO FLIGHT
05. I was music(新曲)
06. Tremolo+A
07. 想像のSecurity
08. CRAZY感情STYLE
09. テレキャスターの真実
10. ラストダンスレボリューション
11. a 7days wonder
12. moment A rhythm

P's CORNER 〜LONG DRUM MC SOLO〜

13. JPOP Xfile
14. Telecastic fake show
15. nakano kill you
16. 感覚UFO
17. 夕景の記憶

345 MC

18. 傍観

 
 



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