「体調に自信のないやつは後ろへ下がれよ。なぜならここは、物凄く危険地域になるからな。トルネード起こそうぜ!」
 楽器本来の鳴りの美しさ、という意味では、これほど豊かな音色を奏でるバンドも珍しい。ピーキーなボーカル・スタイルや、複雑な曲構成に話題が集中しがちだが、生音の鳴りの良さ(それを土台に要所に散りばめられる多彩なエフェクティヴ・サウンド)が活かされた巧みなサウンド・メイク。そこにこそ、このバンドの奥深さが秘められていると言って過言でないだろう。
 全国6ヶ所のZeppを廻る“Tornado Z”は、'09年11月3日のZepp Nagoyaからスタート。Zepp Tokyo以外の会場は初となるツアーだが、東名阪会場はアッという間の即完。その注目度の高さがうかがい知れるというものだ。そして、ツアー・ファイナルとなった11月29日、Zepp Tokyo。ステージ機材撮影のため、昼過ぎに訪れた会場には、すでにファンの姿がそこかしこに見受けられた。
 定刻の数分前、公演に先立ってアナウンスされた注意事項は、もはや恒例となったピエール中野によるもの。「押尾 学です」との挨拶から会場の爆笑を誘い、「来てくれたみんなに感謝! 産んでくれた親に感謝!」「客席前方は大変混み合います。体調に支障を来す恐れのある方、お子様連れの方、ボッ●してしまった方は、予め客席後方にお下がりくださいますよう、お願いします」などの小粋なギャグを絡めた前説は、観客の参加意識と興奮度を高めて、「Say!ヴァイブス!」で締めくくる。会場は開演前から大喝采。
 定刻を迎えると、場内はゆっくりと暗転した。オープニング・ナンバーは、「mid126」。バスドラの音が重く鳴り、ベースの和音は深く響く、そして囁くようなヴォーカルの三者が繊細にループする実に静かな幕開け。が、曲の中盤、TKの叫びからのテンポ・チェンジを切っ掛けに、場内は爆発。暴力的なエネルギーと金属質な温度感を持つ音の塊がぶちまけられる。間髪入れずに「TK in the 夕景」「想像のSecurity」「テレキャスターの真実」「DISCO FLIGHT」と代表曲を続けた。とりわけヒリヒリするようなTKのメタリックなギター・カッティングと、スラップの如くアタッキーなピッキングをブリブリとキメる345のペース・プレイは圧巻。「テレキャスターの真実」はいつ聴いても目眩がするほどカオスな感覚に見舞われる。
 ステージ上のイスに腰を掛けたTKがアコギを手にすると、「Tremolo+A」のイントロへ。1音1音を丁寧に紡ぎ出すかのように、その切々とした想いが全方位へと広がっていく。エレキに持ち替えて披露された「秋の気配のアルペジオ」「knife vacaion」は、しっとりと、しかし浮遊感のある重心の高さが曲を一層疾走させる。
 圧巻は「moment A rhythm」。ボリューム奏法のダイナミズムが張り詰めた静寂の緊張感を誘うイントロ。音の隙間を鳴らす、とでも言おうか、間の響かせ方が実に豊かなこの曲は、失くした瞬間の虚無感が見事にサウンドで描かれる。その中で、ひび割れて唸りを上げるディストーション・ギター・ソロには、わずか8小節に燃え上がるエモーショナルがあった。息を飲む場内の静けさは、それを助長する演出のようで美しい。


 「鮮やかな殺人」は、後半戦の狼煙。「ハカイヨノユメ」「Sadistic Summer」と間髪入れずの波状攻撃に、いよいよ会場には、堪らず沸き立つようなダイブも見受けられる。
 「新曲を1曲やります」というTKの言葉に盛り上がる場内。披露された楽曲は、Aメロのストップ&ゴーと、流麗なBメロによる、リズムの対比が印象的。特にAメロのタム回しを含むピエールのフレーズ的なビート感が心地よい。曲構成に立体感を作る中盤からのリズム・チェンジは跳ねるように速く、ある意味では彼らの新機軸とも言える側面を持っていた。
 「JPOP Xfile」のイントロはTK がつま弾くアドリブからドラムの8ビートへ。音源とは異なる緊張感の高いスタートに客席が沸く。間髪入れずに演奏された「感覚UFO」に続けては、お待ちかねのMCコーナー。「こんばんわ」というTKの挨拶の後に驚きの発表が。「1つ告知があります。次の“I was music”というツアーなんですけど、実はファイナルがありまして。4月17日に、さいたまスーパーアリーナで…」。という言葉のあとは、TKの声がかき消されんばかりの大歓声。「よかったら今日来てる人は、1人につき4人ずつ連れてきてください(笑)」と笑いを誘ったTKだが、高々と右手を突き上げた彼の心の内は、いつも以上に熱気を帯びたに違いない。345の物販説明を挟んで、MCの真打ち、ピエールへ。「1コ、十コ、千コ?」のあとを客席に叫ばせるあたりは、ビークル並の下ネタ(笑)。「ヴァイブス、ビンビンじゃないですかー、申し遅れました私、押尾学と申します!」と御挨拶。その後は、ホットペッパーのCM曲に、これまた下ネタな歌詞をのせてのコール&レスポンス(「CM狙ってるから。オファーくるまでやり続けようと思ってる…でもたぶん木村カエラには嫌われちゃうと思うんだよね」とのこと)。この後もダチョウ倶楽部の上島竜兵ネタ、Xジャンプ(「時雨といえばXジャンプ。ピエール中野の十八番ですよ」とのこと)と続くのだが、もはや会場は身も心も完全に一体。強引に会場内を渾然一体としたピエールの導くヴァイブス、いつもながら恐るべし。
 「体調に自信のないやつは後ろへ下がれよ。なぜならここは、物凄く危険地域になるからな。トルネード起こそうぜ!いけるか!! かかってこいや!!!」とピエール。3人のインタールードを挟んで演奏された曲は「Telecastic fake show」。逆巻く荒波のようなクラウドサーフの嵐。圧倒的な爆発力と狂気、3人で出し得るはずのない凄まじいエネルギーがサウンドに、この上ない熱を帯びさせる。ラスト・ナンバーは「nakano kill you」。疾走する2ビートが、目まぐるしいスピード感を演出。ツインペダルの乱打には思わず鼓動が反応する高揚感があり、壁のような轟音とトリッキーにして繊細なアルペジオにはエモーショナルな起伏の激しさがある。いつも通り、アンコールはなしの約1時間半。鳴り響くフィードバック音の中、ステージは幕を下ろした。アリーナでのライヴという嬉しい知らせは、濃厚なこの日のライヴを一層濃密なものにしたようだ。
 静と動、狂気の暴力性と虚無の喪失感、氷点と沸点のメタリックな温度感…。これらを作り上げる個々のサウンド・メイキングは実に見事なものだった。とりわけTKのギター・サウンドには感情の起伏をなぞるエモーションがある。冒頭に記したとおり、これほど豊かにギターを鳴らすプレイヤーは少ないだろう。“EQUIPMENT”のコーナーでは、この日のステージ機材を公開している。そのサウンド・メイク術には、あっと驚く彼らならではのこだわりがあるので、彼らの音楽的な魅力を解く鍵として、ゼヒ、参照してほしい。

【SET LIST】
01. mib126
02. TK in the 夕景
03. 想像のSecurity
04. テレキャスターの真実
05. DISCO FLIGHT
06. Tremolo+A
07. 秋の気配のアルペジオ
08. knife vacation
09. moment A rhythm
10 .鮮やかな殺人
11. ハカイヨノユメ
12. Sadistic Summer
13. 新曲
14. JPOP Xfile
15. 感覚UFO
16. Telecastic fake show
17. nakano kill you




 
 



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