2011年4月末から3ヶ月にわたって行われたホール・ツアー“VIRGIN KILLER SUICIDE”に続く、時雨史上もっとも本数の多かったというライブハウス・ツアー“αβ+1”。
9月27日の東京・下北沢CLUB Queから始まって、全国27箇所のライブハウスを回ってきた彼ら。その最終日となる東京公演は、LIQUIDROOM ebisu。初日同様、キャパ1000人以下のライブハウスでの東京公演は久しぶりだ。
会場のフロアはもちろんのこと、最後方の壁まで観客で溢れ返らんばかり。静かなピアノのアルペジオが流れる会場の客電が消えたのは、定刻から数分過ぎたころ。SEが流れ、あとはメンバーを待つだけのステージ。ますます緊張感と高揚感を煽る長いSEが二回り目に達したところで、メンバーが登場。持ち場に揃った3人が放ったのは、「nakano kill you」だった。
凛として時雨のサウンドというと、唯一無二のハイトーン・ボーカルや切り裂くようなギターなど高音域の印象が強いのだが、この日のライブは特にベース・サウンドの太さに改めて驚かされた。観客がぎゅうぎゅうに収まったライブハウスの中でさえ、誰もいない部屋で鳴らされているかのような鮮明さで聴こえる。1音1音の芯の密度が違うのだろう。「想像のSecurity」「COOL J」「DISCO FLIGHT」と、のっけから続くキラーチューンで狂ったように波打つフロアを鋭角的なのにどっしり重く太いビートがエグッていく。
一方、TKのギター・サウンドには変わらず薄氷を踏むような緊迫感がある。楽曲を切り裂くほどの凶悪な歪みを聴かせたかと思えば、凍てつくほどの冷気や温もりのような温度感を含んでいたり。シェクター製のオリジナル・ギターだけで、聴く者の五感を呼び醒ましてしまう。
この日はライブ中盤に新曲も披露。TKのギター・カッティングとボーカルからふいに始まった新曲は、4つ打ちドラムやそこに絡むベースが開放的にグルーヴしながらも、リバーブの効いたギターやファルセット・ボーカルが迷宮のように重なり合う独特なナンバーだ。
その後、アコギに持ち替えての「Tremolo+A」などをはさみつつライブの約4分の3が終わると、ピエールのソロ・コーナーへ。本編での緊張感から一変、フシギな爽やかさで嵐〜湘南乃風をギターで弾き語り、フロアにはミラーボールまで煌めき場内に手拍子が起こる。そして「しばらくコール&レスポンスできないからね。だって、ツアー・ファイナルだぜ?」と恒例のコール&レスポンス。今回は「どんな状況になっても俺はやりたい」とNHK教育テレビ発“ぐるぐるどっか〜ん!”ネタも採り入れての掛け合いとなった。そして渾身のドラム・ソロを経て、再びTKと345がステージ上に登場。ギターの短いカッティングだけで次が「JPOP Xfile」だと気づいたのか、観客からは待ってました!と言わんばかりの大歓声が上がった。
残りは、ライブのラストに必ず演奏されている「傍観」を除いて3曲。ここからの流れは、さらに凄まじかった。
音のノリもますます高まり、勢いは加速の一途。
特に「Telecastic fake show」「感覚UFO」では、怒濤のようにカオス化していく感情とは裏腹に、テンポの緩急は研ぎ澄ませたかのようにキマっていく。初めて彼らの音楽を聴いたころ、アクセルをベタ踏みにして突っ込んだ急カーブで1mmも違わずドリフトをキメたときの脳内はこんな感じなんだろうか?と思ったことがある。
凄まじい遠心力で外に広がろうとする力を、それを上回るコントロール力で正確に支配していく感覚。彼らの演奏が見せるのは、サウンドにしろ歌詞にしろ、人間の一番ギリギリな先端…紙一重の際どい部分なのだ。その1点へ向かって渦巻いて求心し合うアンサンブルが、いつしかブラックホールのような恐ろしいエネルギーを生み出す。外へ放たれるのではなく、むしろ集束する際に起きる強大なエネルギー。3人から生まれる得体の知れないグルーヴを感じながら、改めてそんなことを思った。
345によるグッズ紹介MCを挟んで、最後は「傍観」でステージが真っ赤に染まる。
「僕は汚い 僕は消えたい」サビでそう繰り返される歌。そして突き刺すように容赦なく鳴らされるギター、ベース、ドラム。TKは、2人が去ったステージで尚も何度も何度も「消えたい」という叫びとともにギターをかき鳴らし、最後はすべてを吐き出すようにギターをステージに叩きつけた。無垢な楽器が人間の想いを一心に受けて放つ音は、聴く者の魂を禊ぐかのように神々しく聴こえた。
▼【SET LIST】
01. nakano kill you
02. 想像のSecurity
03. COOL J
04. DISCO FLIGHT
05. I was music
06. knife vacation
07. a symmetry
08. テレキャスターの真実
09. ハカイヨノユメ
10. 新曲
11. illusion is mine
12. Tremolo+A
13. 夕景の記憶
<P'S CORNER 〜DRUM SOLO>
14. JPOP Xfile
15. Telecastic fake show
16. 感覚UFO
17. 傍観
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