オリジナル5弦ベース完成秘話を製作担当者と語る
インストゥルメンタル・アルバム『I Never Kill The Groove.』リリースに先駆けて、11月2日、高田馬場CLUB PHASEにてソロ・ライヴを開催した人時。ドラマーにそうる透を迎え、2人のステージを展開したこの日のセットリストは、アルバムを曲順通り再現していくというもの。MCで「カーステレオで聴いてもベースの音がしっかり聞こえることがテーマのひとつ」と語った全13曲は、なるほど重低音の輪郭を浮き彫りにした生々しいサウンドだ。また、“弦楽器はベースのみ”“一部のスラップを除くすべてがピック弾き”という人時流のベースへの深いこだわりに貫かれていた。このステージで、メインとして使用されていたのが『I Never Kill The Groove.』のジャケット写真に抜擢されたSCHECTER製の人時オリジナル・モデルAC-HK/SIGだ。そしてもう1本。「なくてはならないベース」と本人も語る5弦のオリジナル・ベースについて、製作担当者を交えて話を聞いた。

 Groove. 001――オリジナル5弦ベース誕生の経緯
「多弦ベースって僕の中ではモダンなイメージがあるんです
であればカラーリングはオーソドックスなものにしたほうが面白いかなと」


――4弦の人時オリジナル・ベースAC-HK/SIGについては以前のインタビューでお聞きしましたが、その後、5弦のオリジナル・ベースが製作されました。完成はいつ頃のことでしたか?

人時:黒夢の武道館公演(2012年1月13日“Headache and Dub Reel Inch”)の少し前だったかな。それまで5弦は市販の青いベース(SCHECTER EXB-CTM)を使っていましたね。

SCHECTERアーティストリレーション 今井:4弦のAC-HK/SIGが完成した後に人時さんから、「5弦のオリジナルも欲しい」という話があったんです。それが初披露されたのが武道館だったと思います。

――5弦のオリジナル・ベースは必要に迫られて製作されたものということですが?

人時:いろいろなアーティストのサポート・ベーシストとしての活動も含めて、5弦の需要が増えてきたんです。たとえば、Creature Creatureとかakiちゃんのライヴ現場もそうだし、レコーディングでも5弦を求められることが多い。そんななかで、自分のオリジナルを基にした5弦ベースがあったらいいなと思っていたので。

――製作にあたって、人時さんからはどのようなオーダーを?

人時:多弦ベースって僕の中ではモダンなイメージがあるんですよ。だからAC-HK/SIGのようなホワイトのカラーリングは結構普通な感じがしていて。であればカラーリングは逆に、オーソドックスなものにしたほうが面白いかなと思って3トーン・サンバーストにしました。材質とかはAC-HK/SIGと同じでよかったのでSCHECTERさんにお任せしつつ、5弦にもプレベのピックアップを2発搭載したいという話はしましたね。

今井:プレベのピックアップを搭載した5弦ベースって意外とどこのメーカーも製作してないんですよ。EXB-CTMはバルトリーニ製のハムバッキング・ピックアップを搭載しているモデルなんですけど、その感触を聞いたところ「そんなに悪いイメージはない」と。で、バルトリーニには5弦用プレベタイプのピックアップがあるので、それを2発搭載しています。

――プリアンプを搭載したアクティヴ・タイプですか?

今井:いや。最近の5弦ベースはアクティヴ回路を載せているモデルが多いんですけど、人時さんの5弦オリジナル・ベースはパッシヴです。そのあたりは人時さんのこだわりですよね。

人時:やっぱり僕は、アクティヴ回路の音が好きになれないっていうのがあるんですよ。どうしてもパッシヴが良くて。

今井:これはおそらくですけど、アクティヴをかますと音にコンプがかかったような感じになるんですね。たとえば、エッジを立ててドライヴさせたいのに、アクティヴを通すことでカットされちゃう。ピックで弾く人は特にそれを嫌いますね。

――それはすなわち、パッシヴはピッキング・ニュアンスで音をコントロールできるベースであり、人時さんはそちらのほうが好みということができます?

今井:そうだと思います。逆に言うと、ピッキングでコントロールできない人は、アクティヴでブーストさせたほうがラクなんですよ。アンプにこだわらず、手元のプリアンプだけイジれば、すぐに自分の音が作れちゃうんで。

人時:確かにコンプ感とかリミッター感は、どうしてもイヤなんですよね。この5弦ベースは、弾き手の言うことを聞いてくれるようなところがあるんです。

 



Groove. 002――
「製作へのこだわりが浮き彫りにしたベース観」へ続く>>